2015年9月3日木曜日

弘前城の曳家作業【2017/09/19追記しました】







建物を移動するには、大別すると
・いったん解体して部材の状態に戻して、別の場所に持って行って,建て直す方法
  バカバカしく見えるかもしれませんが、江戸時代、茶道好きのお大名には、参勤交代の際
  に、そうやって「お気に入り」の茶室を江戸と国許の間で移動させていた人もいました
・いったん基礎から外しておいて持ち上げておいて、横にずらし、
  新しい基礎の上に載せる
  仮の基礎の上に載せておいて、元の場所に新しく基礎を作り、再び建物をずらして載せる
  「曳家」と呼ばれる方法
などがあります。


 どちらも、どんな建物でもできる、というわけではありませんが、後者の「曳家」は、
・土地区画整理などで、移転しなければならないときに、建物を「ちょっとずらせば済む場合」
・国宝・重文など文化財建築物なので、それしか方法がない場合
・基礎に重大な欠陥があり、基礎を作り直すまで、建物をずらして置いておけるほど敷地にゆ
 とりがある場合
などには検討の余地がある、というかコスト面でそれしかやりようがないこともあります。
 
 今年の7月から、上の2番目の典型例で、青森県の弘前城の曳家が始まりまた。
 ここでは、天守閣の下の石垣を積みなおして修理する必要が生じ、そのためには、上に載
っている天守閣の方をいったん石垣の上から取り除かなければならかったためのようです。


 その経過は、ここ
http://www.wagatsumagumi.jp/category/2017033.html
に詳しく写真入りで順次報告されています。

 建築の作業は「段取り7分で、仕事が3分」とも言われていますが、ここでも、建物を動かす作業よりむしろ、その前に、動かすことによって建物が歪んでしまうのを防ぐための「下ごしらえ」がいかに大変かがわかります。


 もちろん、弘前城は重要文化財であるうえ、建物が傾くと歪みが生じて塗り壁がガタガタに割れてしまうので、建物のあちらこちらにセンサを取り付けて常時建物の変形を監視しながら、コンピュータ制御の油圧ジャッキで持ち上げる必要があります。
 これも「持ち上げること自体」よりもコストがかかるはずで、一般住宅の場合は、そんな手間暇・コストはとてもかけられませんので、結局、建物がある程度歪んでしまうのは承知のうえで、「下ごしらえ」は「ほどほど」にし、その代わりに、最終的に歪んでしまった建物を正常な状態に戻すために、壁を全部解体して作り直す必要が生じるのが、ほぼ不可避なのですが、往々にして、事前に、そのコストが忘れられがちになるので要注意です。
 そのコストを勘案すれば、条件次第ですが、建物全部を取り壊してしまっても一般的な住宅ならとくに問題はないのですから、完全に建て替えてしまった方が、曳家するよりもかえって「安上がり」になることもあるのです。


【追記】

知人のブログに、この曳家工事の現況(2017/09/09現在)がリポートされていました。

弘前城 天守閣の曳家を見る













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