2017年9月27日水曜日

【トリヴィア】「あり得ないはずの地域」での不同沈下

■地盤の問題は…
不同沈下にしても、液状化にしても、一筋縄では将来の予測が付きません。

 それだけに、専門家の方々は、建物を建てる前の地盤調査を「うるさい位」に強く奨めているのですが、ふと、その典型例をご紹介しておこうかと、思い至りました。

■そこは…

東京都豊島区駒込。

一般的には、旧荒川(現・隅田川)の河岸段丘の上の台地上の地域です。

 もちろん、そんな地域でも、今は暗渠化というか下水道化されてはいますが、小さな川はあったはずで、その両岸は近世期は田圃、やや乱暴にいえば「軟弱地盤があって不思議がない」区域なのですが、問題の場所は、駒込駅からの道路を進むと、一旦微低地に下って(当然「元川」とわかります)そこからさらに上って、その先の小さな丘の頂上の少し手前、という場所でした。

■ご本人のお話では…
「実はウチ、傾いてるんです」とのことなのですが、地図や土地条件図(もちろん、ピンポイントのことはわからないのですが)で予備調査した限りでは、上記のとおり「台地上のそのまた台地上」みたいな場所でしたのでにわかには信じがたい。

 そうだとすると、まず考えられるのは「基礎があまりにいい加減だった」ということなのですが、実際にうかがってみると、そんないわゆる「安普請」の家ではなかったのです。

■実は…
この案件、いわゆる「欠陥住宅事件」ではなかったのですが、もし不同沈下があるなら、データを取る必要があったため、持っていったレーザー・レベルで傾斜を測ってみたところ…

5.5/1000という
廊下の奥から、高さ25.4ミリ(1インチ)の高さで水平に照射されている
レーザービームが、4.45メートル(2間半)離れた床を照らしている。
5年ほど前の時点では(とはいっても、今から30年以上前の昔に、この種の案件を手がけ始めたころはもっとひどい事例もゴロゴロとあったということなのですが)
「最近では、稀にみる不同沈下」
だったのです。

■こうなると…
こちらの頭の中の方が混乱してしまいます。

私   :ここは、隅田川沿いの高台中の高台で、こんなに家が傾くというのは、
     仮に基礎が相当いい加減でも考えにくいのですが…
奥さん:そういえば、ご近所の方のお話では、戦時中爆弾が落ちて大きな穴
     があいて、それを埋めたらしいです。

 そうだとすると、とりあえず「戦後の復興」の時代、今みたいな重機はもちろんありませんし、ランマーなんていう手軽に使える地面を突き固める機械もありません。当然、地盤調査をするわけがありませんので(多分、当時は、あえてするならボーリング調査しか方法がない)、どこかから土を持ってきて「地面が平になればそれでよし」と焼けてしまった家を建て直したはずです。

 しかし、ほとんど当座雨露がしのげればよい、という比較的軽い「1代目の住宅」のときはそれで破綻が生じなくても、高度成長期の中で建替えられた「2代目の住宅」になると、平家が2階屋になり、設備や部材の変化でそれなりに重さが増えて不同沈下が生じてしまったのだと思います。

■考えてみると…
いわゆる「お大尽」でもない限り、今では住宅の敷地の面積も限られていていますし、ご紹介した事例のように、高台、低地といったおおざっぱな仕訳では、とんでもないことが起こりかねません。
 つまり、普通の宅地については、いわば「ミクロ的」な判断が不可欠で、ましてや、マクロ的というか地質学的な概念である「沖積層、洪積層」なんていう仕訳は、いわば「教科書的」にはともかく、ミクロ的な個々の土地については全く「歯が立たない」ことが、この事例でよくわかります*

*詳細は、拙稿
 地盤と基礎(その1:地盤とその沈下)
 http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201306_09.pdf
 の冒頭ページの左欄をご一読ください。

■結局…
ミクロ的な問題はミクロ的に、つまり、当該敷地を地盤調査*するほかないことになります。

地盤調査といっても、たとえ本格的なボーリング調査をしても数10万円。

*地盤調査の具体例は、同じく拙稿
 地盤と基礎(その2:地盤とその沈下)
 http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201307_09.pdf
 をご参照ください。

 これに対し、土地代は少なくとも1000万円以上、加えて、不同沈下にせよ液状化にせよ「起こってしまえば補修に最低でも数100万円」という世界ですので、考えてみると、損害保険料と思えば格安ともいえます。

 筆者自身の個人的な経験でも、キッチンとバスルームをそれぞれ1ランクか2ランク落とせば、楽勝で捻出できる金額なのですし。



 

2017年9月22日金曜日

【講演録】「がけ」と擁壁

〔まえがき〕

 末尾の【参考文献】のそのまた末尾にある「5」の国民生活センター〔以下「国セン」〕のWebマガジンに「がけと擁壁」という原稿を投稿していたところ、旧知のK弁護士から
 欠陥全国ネット 四日市大会(平成15年5月31日)
で「がけと擁壁について何か喋れ」とのオーダー。

 そう言われても、実は、この国センのシリーズを執筆したのには、過去20年、具体的には兵庫県南部地震以来、のいわくがありました。

 それは、
「こ(あ)れだけの建築物の被害があったのだから、これからは建築の先生方が、建築物の構造強度や地盤について、わかりやすく、かみ砕いた解説を続々と公表して下さるだろう」
との期待があったからです。

 それというのも、欠陥住宅に関わる裁判で、弁護士は、物理あるいは技術の世界と法律の世界との「通訳」の役割をする必要があって、そのような「素人にも理解できる」解説があれば、いわば「技術の世界と法律の世界をつなぐ英和辞典」というか「古文書の訓み下し文」のように使うことができ、裁判所(裁判官も建築については原則素人です)に、こちらの主張を理解してもらうために非常に有用なのですが、従来は、それに値する文献がほとんどない状況だったからです。

 つまり、このシリーズ中の多くは、建築の先生方が、書いて公表していただきたかったテーマだった、と、いうよりむしろ「兵庫県南部地震を受けて、建築の専門家が『書かなければいけない』」テーマなのです。

 しかし、「待てど暮らせど」「これは」という「辞典」は現れず、あえていわせていただければ「期待は失望」に変わっていました。

 そんな折、国センさんから、件のシリーズの原稿のご依頼があったの契機に、一つの決断をしました。
「誰も書いてくれないのなら、しかたないので、過去4半世紀の『門前の小僧』の経験を最大限に活用して
『建築の素人の、素人による、素人のための解説』
を書こう」。
(「決断」というのは、これを書く本人にとってはある意味「リスキー」だからです。なぜなら、他人が書いた文章なら裁判でも「証拠」に使えるのですが、自分が書いたものだと「主張」つまりは別途証拠によって裏付けする必要のある「言い分」にしか使えないのです。実は)


 ということから「法律的には勿論として、技術的にも過去の知見と新たな調査の結果からまず間違いがないだろうと確信できる範囲」でまとめたのが、このシリーズでした。

 とはいえ、欠陥全国ネットは、弁護士だけでなく建築専門家も加わって構成されている団体です。以下のアーティクルを読めばお分かりのとおり、この問題は、法律の問題というより、「がけ」の危険性の判断にしても安全な擁壁の設計にしても、その根拠を含めて、元を質せば「物理法則」の問題なのですから
「それなら建築の先生に話していただいた方がよいのではないか」
とK弁護士に答えたのですが…

 K弁護士によれば
「がけと擁壁について、法律的な観点から話せ」
とのオーダー。

 法律論と言われるとお断りもできないのでお引受けしたものの、この問題、本文のとおり物理的には理屈が単純明快なため、引き受けた本人の方も、それまでは、物理的に考えて「こんなのアウトに決まってるじゃん」とか「これアヤシ~ィ」といった思考回路でしたので、あらためて「法律的」な裏付けを順序立てて説明するのは、結構大変な作業になってしまいました。

 でも、突き詰めて調べてみると、法律のルールも、結論的には
「物理法則にてらしてダメなものは、ダメ」
と言っていることが分かったのですから、まぁ「やってみて、よかった」。

〔以下本文〕
 

「がけ」と擁壁 ―法的ルールとその原理―

1 「がけ」についての「ポータル条項」

建築基準法
第19条(敷地の衛生及び安全)
④  建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。


  「がけ崩れ『等』」とあるので、文言上「敷地」の、「建築物」に人の「生命、健康及び財産」にかかわる「被害」を生じさせる「おそれ」のある変状(「がけ崩れ」は典型例で、他の「地盤災害」たとえば「地すべり」、「液状化」、「地盤沈下」なども含む)すべてに適用されると解すべきことになる。

2 そもそも「がけ」とは?
2.1 「がけ」の定義
 建基法令にはなく、解釈の問題であるが、その基本は「物理の法則」に求められる。

 →宅地造成等規制法施行令1条2項
   「地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地
 →条例によるルールもほぼ同趣旨
  Ex.神奈川県建築基準条例2条の3
       東京都建築安全条例6条1項(「がけ高」の定義)

2. 2 「がけ」の定義の根拠


  いわゆる「安息角」つまり、外力が加わらなければ崩れない状態の最大の角度は
  粘性土⇒約30度
  砂質土⇒約45度
であり、岩盤では90度以上でも安全な場合はありうるが、「たとえどんな土質であっても」という観点から、安全側に割り切ると「30度」となる。

3 「がけ」と建築物
3.1 「『物理の法則』どおりのルール」の典型例
 神奈川県建築基準条例3条(抜粋)
 〈 http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/168956.pdf
 (がけ附近の建築物)
第3条 高さ3メートルを超えるがけの下端(がけの下にあっては、がけの上端)からの水平距離が、がけの高さの2倍以内の位置に建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成する場合(…)には、がけの形状若しくは土質又は建築物の位置、規模若しくは構造に応じて、安全な擁壁を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する部分については、この限りでない。

 (1)がけの形状又は土質により安全上支障がない部分
 (2)…
2 前項の規定は、がけの上に建築物を建築する場合において、当該建築物の基礎ががけに影響を及ぼさないとき、又はがけの下に建築物を建築する場合において、当該建築物の主要構造部(…)を鉄筋コンクリート造とし、又はがけと当該建築物との間に適当な流土止めを設けたときは、適用しない。





3.1 「擁壁」を設けないで済むかどうかの判断の手順

Step  1: 「『がけ』の形状又は土質により安全上支障がない」ことを確認する(1項但し書き1号)
      たとえば、砂質土、岩盤などであることを確かめる
     土質に応じた安息角の目安
     → 宅地造成規正法施行令6条別表第1 ただし切土に限る


Step 2: 「『がけ』の形状又は土質により安全上支障がある」ときは
     (1)がけ上の建築物について
       建物による荷重が「がけ」に届かないようにする(2項前段)
         「建築物の基礎ががけに影響を及ぼさない」

     (2)がけ下の建築物について
       「がけ」が崩れることを前提として対処する(2項後段)
       =崩れても建物が壊れないようにする

         「建築物の主要構造部(…)を鉄筋コンクリート造と」する
         「がけと当該建築物との間に適当な流土止めを設け」る

          ようにする

3.3 もっとも…

 宅地とくに住宅密集地での土地の有効利用や使い勝手からは、原則どおり、「安全な擁壁」を設ける(3条1項本文)が最も現実的な対処といえる。

4 「安全な擁壁」とは
4.1 「擁壁」の法的ルールとして(概略は「【別表】擁壁に関する法的ルールの概要」参照)
 
 建築基準法に
   法88条1項→令138条5号→令142条
    →建設省告示第1449号(平成12年5月31日)
   「煙突、鉄筋コンクリート造の柱等、広告塔又は高架水槽等及び擁壁並びに乗用エレベーター又はエスカレーターの構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」

  第3 令第138条第1項第五号に掲げる擁壁の構造計算の基準は、宅地造成等規制法施行令(昭和37年政令第16号)第7条に定めるとおりとする。【註:後述】ただし、次の各号のいずれかに該当する場合にあっては、この限りでない。
  一  宅地造成等規制法施行令第6条第1項各号の一に該当するがけ面に設ける擁壁
  二  土質試験等に基づき地盤の安定計算をした結果がけの安全を保つために擁壁の設置
が必要でないことが確かめられたがけ面に設ける擁壁
  三  宅地造成等規制法施行令第8条(註:仕様規定)に定める練積み造の擁壁の構造方法に適合する擁壁
  四  宅地造成等規制法施行令第15条の規定に基づき、同令第6条から第10条までの規定による擁壁と同等以上の効力があると建設大臣が認める擁壁


との規定があるので、それだけに目が行きがちになり、ここから「高低差2メートル以下なので擁壁は不要」といった「誤読」が生まれることになる。
 しかし、これらの規定は、文言上からも、
  ・高さが2メートル(註:上下の地盤の高さの差をいう)を超える擁壁にについて、一定の構造計算ないし仕様の遵守と確認手続きを義務付ける規定で
  ・「どのような場合に擁壁を設けなければならないか」を規定するものではない
   cf .宅地造成等規制法
      高低差 盛土:1mその他:2m
      都市計画法(開発行為)
      高低差 盛土:1mその他:2m
  ・まして、高さ2メートル以下のがけについて
    擁壁を設けなくてもよい とか
    どのような擁壁を設けてもよい
   などとは一言も言っていない   

4.2 結局、いわば「擁壁築造義務」についての

建築基準法令上の「ポータル条項」も…
やはり、建築基準法19条4項、つまり
「建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。」
とのルールなあのであって、擁壁は、
・「がけ崩れ…による被害」をうけるおそれがあり、
・擁壁を設けるほかに、これを解消できる適切な方法がない
場合は、高さにかかわらず「安全上適当」なものを設ける必要があるということになる。
 ∴ 高さにかかわらない。
   2mを超えない擁壁については、
  構造計算と確認手続きが義務付けられていないだけで 
  「安全上適当」なものである必要がある
 と解すべきことになる。

4.3 「安全上適当な擁壁」とは
 (1) 壊れない=擁壁の「強度」
 (2) コケない=擁壁の「安定性①」
 (3) ズレない=擁壁の「安定性②」
 (4) 沈まない=擁壁の「安定性③」
の全てを満たす擁壁をいう。

 宅地造成等規制法施行令7条参照
  (建築基準法冷上建設省告示第1449号で準用(前述)、都市計画法施行規則27①Iも同旨)


4.4  擁壁のタイプと必要な性能
 どのタイプにしても、上記の「強度」と「安定性」を満たしつつ、下記の「土圧」を支え切る必要がある。
 
 
ただ、擁壁の場合は、建築物と比べると
:「支えなければならない土圧等の荷重が単純」(上記公式)

・「原理が明確」(下図。とくにRC擁壁の場合)
なので、「土質」と「高さ」が確定すると、構造+必要な地盤の支持力が決まることになる。


 そのため、各自治体などで、「擁壁標準図」が作られ、インターネットなどでも公開されている。


5 「危ない」擁壁とは

5.1 原理的には「危ない」擁壁=上記「原理」から外れた擁壁…
ということになるが、いわゆる「アタリの付け方」としては、
上記の「標準擁壁図からサイズや鉄筋の量など強度の面で大きく外れた擁壁」かどうかで見当を付けることができる。

5.2  その他、問題の生じることが多い擁壁の実例としては
・ 底版の(足り)ない擁壁→原理的に、「倒れる」か「ズレる」
    擁壁の「滑動」を防いでいるのは、主として底版と地盤との摩擦なので底版の面積が足りないと、「ズレる」ことになる。
    また、L字型、T字型のRC擁壁では「転倒」を防ぐ力も底版上の土の荷重から得ているので、底版の面積が足りないと「コケ」やすく
なる。
・ 強度不足の擁壁→原理的に、「壊れる」
    コンクリートブロック積みなど、もともと強度が不足している場合だけでなく、擁壁の形や構造は標準擁壁図に適合していても、水抜き穴がない場合は、本来支えるべき土圧に加えて豪雨時等に土の中の水の圧力が加わると結果的に強度不足となって、壊れたり変形したりしやすくなる。
・ 増し積み擁壁→原理的に、「何が起こってもおかしくない」
    下の①のような擁壁の上に、②の図のように別の擁壁を載せたもので、もとあった擁壁は、その時点での内側の土の荷重に対応するよう設計されているのが通常なので、そこに新たな土の荷重が加わると、安定性が失われる可能性が高くなる。
   また、新旧の擁壁の接合部を一体のものとすることはまず不可能なので、強度の面でも不足することになる。

論文「兵庫県南部地震による宅地擁壁被害の特徴と原因」(沖村孝・外 1999年)
https://www.jsce.or.jp/library/eq10/proc/00037/637-0029.pdf〉 参照

6 おわりに

 擁壁の多くは、隣地境界線のところにあり、その場合、調査するにしても、補修を行うにしても、隣地への立ち入りや使用が不可欠になるし、擁壁自体が隣地所有者の所有物であることもあり、このことが、擁壁をめぐるトラブル解決の法的、物理的な最大のネックとなることが多い。

【別表】


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【参考文献】
1 『2007年版 建築物の構造関係技術基準解説書』(国土交通省住宅局建築指導課ほか・監修2008年) pp.41・42、pp.210・211
2 『建築基礎構造設計指針』(日本建築学会 2001年)pp.353~372
3 『小規模建築物基礎設計指針』(日本建築学会2008年)pp.198~203、pp.227~
4 『新版 土と建築基礎の問答』(鈴木三郎 2001年)pp.196~228
5 国民生活センター・ホームページ>研修・資料・相談員資格>国民生活>住宅に関する相談事例を考える バックナンバー〈http://www.kokusen.go.jp/wko/data/bn-sjutaku.html〉 中、
 「『 が け 』 と 擁 壁( 前 編 )」http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201304_09.pdf
 「『 が け 』 と 擁 壁( 後 編 )」http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201305_12.pdf

2017年9月20日水曜日

【講演録】地震による液状化の事例報告〔モノの調べ方・考え方〕

【追記】2018/09/06 〔あらたな情報が入り次第、随時追記・訂正予定〕
 
 平成30年9月6日午前3時8分に発生した、北海道南西部の胆振地方を震源とする地震(マグニチュード6.7。最大震度6強7安平厚真町など〕)〔平成30年北海道胆振東部地震〕
 
で、2003年十勝沖地震によって、本文のような事案が発生した、札幌市清田区〔推計震度分布図では、震度5弱〕でまた液状化が起きた(ニュース画像によると、今回は、2003年に液状化した場所からは東方の里塚〔旧地名・三里塚〕地区の模様)
 

気象庁HP
http://www.jma.go.jp/jp/quake/20180905180940353-06030805.html
より抜粋して(×が震源地)、清田区の位置をで補入
 テレビの画像でみる限りでは、2003年十勝沖地震や、それより広範囲に被害の生じていた1968年十勝沖地震による液状化よりも、さらに、液状化の範囲や地盤の変状が大きいように見える。

    NHKの午後9時のニュースで、地上で撮った画像が比較的長時間放映された。
    地上への噴砂量といい建物の傾斜角といい、2003年の液状化とは全くレベルが違う(後記講演資料P.03参照)。
    1968年のは、映像記録がないので文章上で判断するしかないが、それよりやや範囲が限定されている模様
    そのかわりに、建物の変状は大きいように思われる(後記講演資料P.06参照)。
 
 震源が近いのが影響しているかとも思われるが、揺れがいくら大きくても「どかん」と1回限りの地震動では液状化は起こりにくい。つまり、地震動の強さだけでなく、その持続時間が問題になるので、今後発表されると思われる、*地震波形に注目する必要がある。
 
   *「平成30 年北海道胆振東部地震の評価」地震調査研究推進本部地震調査委員会/平成30 年9 月6 日
    
https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2018/20180906_iburi.pdf
    の8ページ目に安平町の地震波形が公表されている。
 
【追記の追記】
 
時系列地形図閲覧ソフト「今昔マップ3」
で、1968年、2003年そして今回の液状化した場所を、旧地形のわかる大正5年の地形図上にプロットしてみた。
 
読売新聞2018年10月06日朝刊7面によると、今回は、
赤塗の旧い谷筋が大規模に液状化したらしい。
 
 いずれも、面状あるいは線状に発生しているので、概略だが
・1968年:緯度:42.99121 経度:141.4316
・2003年:緯度:42.98042 経度:141.4591
・2018年:緯度:42.98869 経度:141.4613
 
 
 これらの液状化地域の共通項としては、旧い谷筋を埋めた場所であることを挙げることができるが、さらに、2003年と今回の共通項として「埋めた谷筋のすぐ下流に道路がある場所で液状化した」ことが挙げられるように思う。
 
 谷筋を埋めたからと言って、そこに水が流れなくなるわけではなく、とくに、水源部などに湧水があったりすれば、その後も、地中を伏流水となって水は流れ続ける。
 
 一方、とくに北海道では、冬季に地盤が凍結して道路が変形する(凍上)のを防ぐために、道路下部の路盤を強固に突き固めるため、路盤の部分は水が流れにくくなっていることになる。
 
 もちろん、現に川がある場所に道路を通すなら、水の流れをせき止めないために、カルバートとかヒューム管で水のためのトンネルを設けるだろうが、2003年の事例のように、はるか昔に埋め立てられた谷筋の場合、どこまで、そのような措置が可能かは疑わしい。
 
 そのため、現に伏流水の流れている谷筋を横切る形で道路を作れば、下図のように、その路盤が、いわば「地中のダム」になって、伏流水をせき止めるので、その上流部の水位が上がるし、通常はモロモロの砂質土を谷に放り込んだだけの場所だろうから、特に液状化のリスクは大きくなるのが道理なのである。
 
 
 
 
 
〔2017年5月27日…〕
 
東京都台東区花川戸2丁目という、えらく「粋」な場所にある、台東区民会館で開催された
「欠陥住宅全国ネット 東京大会」
で、地震による液状化について、従前てがけた2事例を発表させていただきました。
 
ただ、もともと「地べた」の問題というのは、液状化に限らずケースバイケースで、ある事例が、ほかの事例に「ぴったり」あてはまることは、まずありません。
 
ここでは、その2事例のうち
「モノの調べ方 モノの考え方」
という意味で、比較的一般性というか汎用性があると思われる1事例のプレゼン用スライドとお話の概略をまとめた、パワーポイントの「ノート」をアップロードさせていただきます。

 




















■当日配布した文献リスト

このリストについては、リンク先に直接アクセスできるように、テキストデータでご披露します。

【地盤にかかわる参考文献・資料】
                          弁護士 木  村    孝
 拙著「住宅に関する相談事例を考える」
  http://www.kokusen.go.jp/wko/data/bn-sjutaku.html
中「第11回 地盤と基礎(その1:地盤とその沈下)」
  http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201306_09.pdf
本文末尾のリストに改訂を加えたものである。

1.地盤調査データについて
・インターネット上では、
 株式会社ジオテックインターネットで住宅地盤情報「ジオダス」
  http://www.jiban.co.jp/geodas/v30info/area_GEODAS.htm
  は、北海道を除くほぼ全国をカバーしている。
・自治体でも、
東京都土木技術支援・人材育成センター「東京の地盤」
  http://doboku.metro.tokyo.jp/start/03-jyouhou/geo-web/00-index.html
 横浜市行政地図情報提供システム地盤地図情報「地盤View(じばんびゅー)」
  http://wwwm.city.yokohama.lg.jp/agreement.asp?dtp=3&npg=%2Findex%2Easp
など、地盤データや液状化リスクを閲覧できるサイトが増えている。
また、ネット上にない場合でも、それぞれの地域の特定行政疔(建築主事のいる近
くの自治体の建築指導課など)で閲覧できることが多い。

2.古地図について
・時系列地形図閲覧ソフト「今昔マップ3」
  http://ktgis.net/kjmap/
では、閲覧用ソフトをインターネットからダウンロードすれば、東京・京阪神・中京地
域札幌市その他の主要都市の、過去から現代までの地形図を閲覧・保存すること
ができる。
 また、古い時代の地図は、それぞれの地域の図書館(特に中央図書館)に蔵書し
ていることも多い。図書館以外に、地域の郷土博物館、郷土資料館あるいは町村
史などの編纂室で、歴史史料として閲覧やコピーができることもある。

3.空中写真
 戦後(東京近郊の一部のみ1940年前後)からのデータであるが、以下の空中写
真も、土地の過去の状態を知るのに有用なことが多い。
・国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」
  http://mapps.gsi.go.jp/maplibSearch.do#1

4.土地条件図
・国土地理院「地理院地図」のベースマップとして選択・閲覧できる
  http://maps.gsi.go.jp/
5.一般的な文献・資料
『小規模建物基礎設計の手引き』(日本建築学会1988年)
『小規模建物を対象とした地盤・基礎』(同上2003年)
『小規模建築物基礎設計指針』(同上2008年)
株式会社ジオテック「住宅地盤に関する情報」
  http://www.jiban.co.jp/tips/kihon/index.htm
 
【追記】
 
液状化の「原理」の簡単な説明については、拙稿
地盤と基礎(その1:地盤とその沈下) 
の4ページ目末尾以下をご一読ください。