不同沈下にしても、液状化にしても、一筋縄では将来の予測が付きません。
それだけに、専門家の方々は、建物を建てる前の地盤調査を「うるさい位」に強く奨めているのですが、ふと、その典型例をご紹介しておこうかと、思い至りました。
■そこは…
東京都豊島区駒込。
一般的には、旧荒川(現・隅田川)の河岸段丘の上の台地上の地域です。
もちろん、そんな地域でも、今は暗渠化というか下水道化されてはいますが、小さな川はあったはずで、その両岸は近世期は田圃、やや乱暴にいえば「軟弱地盤があって不思議がない」区域なのですが、問題の場所は、駒込駅からの道路を進むと、一旦微低地に下って(当然「元川」とわかります)そこからさらに上って、その先の小さな丘の頂上の少し手前、という場所でした。
■ご本人のお話では…
「実はウチ、傾いてるんです」とのことなのですが、地図や土地条件図(もちろん、ピンポイントのことはわからないのですが)で予備調査した限りでは、上記のとおり「台地上のそのまた台地上」みたいな場所でしたのでにわかには信じがたい。
そうだとすると、まず考えられるのは「基礎があまりにいい加減だった」ということなのですが、実際にうかがってみると、そんないわゆる「安普請」の家ではなかったのです。
■実は…
この案件、いわゆる「欠陥住宅事件」ではなかったのですが、もし不同沈下があるなら、データを取る必要があったため、持っていったレーザー・レベルで傾斜を測ってみたところ…
5.5/1000という
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| 廊下の奥から、高さ25.4ミリ(1インチ)の高さで水平に照射されている レーザービームが、4.45メートル(2間半)離れた床を照らしている。 |
「最近では、稀にみる不同沈下」
だったのです。
■こうなると…
こちらの頭の中の方が混乱してしまいます。
私 :ここは、隅田川沿いの高台中の高台で、こんなに家が傾くというのは、
仮に基礎が相当いい加減でも考えにくいのですが…
奥さん:そういえば、ご近所の方のお話では、戦時中爆弾が落ちて大きな穴
があいて、それを埋めたらしいです。
そうだとすると、とりあえず「戦後の復興」の時代、今みたいな重機はもちろんありませんし、ランマーなんていう手軽に使える地面を突き固める機械もありません。当然、地盤調査をするわけがありませんので(多分、当時は、あえてするならボーリング調査しか方法がない)、どこかから土を持ってきて「地面が平になればそれでよし」と焼けてしまった家を建て直したはずです。
しかし、ほとんど当座雨露がしのげればよい、という比較的軽い「1代目の住宅」のときはそれで破綻が生じなくても、高度成長期の中で建替えられた「2代目の住宅」になると、平家が2階屋になり、設備や部材の変化でそれなりに重さが増えて不同沈下が生じてしまったのだと思います。
■考えてみると…
いわゆる「お大尽」でもない限り、今では住宅の敷地の面積も限られていていますし、ご紹介した事例のように、高台、低地といったおおざっぱな仕訳では、とんでもないことが起こりかねません。
つまり、普通の宅地については、いわば「ミクロ的」な判断が不可欠で、ましてや、マクロ的というか地質学的な概念である「沖積層、洪積層」なんていう仕訳は、いわば「教科書的」にはともかく、ミクロ的な個々の土地については全く「歯が立たない」ことが、この事例でよくわかります*。
*詳細は、拙稿
地盤と基礎(その1:地盤とその沈下)
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201306_09.pdf
の冒頭ページの左欄をご一読ください。
■結局…
ミクロ的な問題はミクロ的に、つまり、当該敷地を地盤調査*するほかないことになります。
地盤調査といっても、たとえ本格的なボーリング調査をしても数10万円。
*地盤調査の具体例は、同じく拙稿
地盤と基礎(その2:地盤とその沈下)
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201307_09.pdf
をご参照ください。
これに対し、土地代は少なくとも1000万円以上、加えて、不同沈下にせよ液状化にせよ「起こってしまえば補修に最低でも数100万円」という世界ですので、考えてみると、損害保険料と思えば格安ともいえます。
筆者自身の個人的な経験でも、キッチンとバスルームをそれぞれ1ランクか2ランク落とせば、楽勝で捻出できる金額なのですし。

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